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東京巧者こそが競馬界の主役!「府中の鬼」5頭をご紹介!GⅠ最多勝の、あの馬も!?

名馬

競馬界には「東京巧者」「府中巧者」「府中の鬼」と呼ばれる競走馬が、たびたび登場します。

「東京巧者」とは、その名の通り「東京競馬場でのレースに強い競走馬」のことです。東京競馬場の住所が東京都府中市であることから「府中巧者」という呼び方でも、間違いではありません。

今回の記事では、日本の競馬界を大きく盛り上げた「東京巧者」を5頭、ご紹介します。東京巧者との名レースを振り返り、競馬の素晴らしさを感じていきましょう。

東京巧者の名馬 1 アーモンドアイ

ロードカナロア
フサイチパンドラ
同世代の活躍馬ワグネリアン、フィエールマン、ラッキーライラックなど
競走成績15戦11勝(東京成績 7-1-1-0)
GⅠ勝鞍(赤字は東京GⅠ2018年 桜花賞

2018年 オークス

2018年 秋華賞

2018年 ジャパンカップ

2019年 ドバイターフ(アラブ首長国連邦

2019年 天皇賞・秋

2020年 ヴィクトリアマイル

2020年 天皇賞・秋

2020年 ジャパンカップ

一番にご紹介する東京巧者は、2020年時点でGⅠ最多の9勝を記録した三冠牝馬アーモンドアイです。

GⅠ9勝中のうち6勝を東京競馬場で挙げている点から、アーモンドアイを「最強の東京巧者」と評するファンは多いでしょう。

アーモンドアイはとにかく「高速馬場の根幹距離」に強く、東京競馬場でのビッグレースに向いた能力を誇っています。JRAの平地GⅠは全24レース中7レースも東京芝コースで行われるため、アーモンドアイはGⅠ最多勝の王道を駆け抜けてきた、と言えるでしょう。

一方、アーモンドアイは有馬記念での大敗から「トリッキーで力のいる非根幹距離コースが苦手」といった印象を持たれています。そのためアーモンドアイはGⅠ最多勝記録を保持しておきながら、「史上最強牝馬」とまでは呼ばれにくいようです。

東京巧者 アーモンドアイの注目レース「2020年 ジャパンカップ」

前走の天皇賞(秋)でGⅠ最多勝の8勝目を挙げたアーモンドアイ。引退レースは有馬記念ではなく3歳時に2400mの世界記録を叩き出した、得意コースのジャパンカップを選びます。

2020年のジャパンカップ。アーモンドアイは無敗の三冠牝馬デアリングタクト、そして無敗のクラシック三冠馬コントレイル「3強状態」を形成。

オークスから10戦連続で単勝1倍台の人気を誇っていたアーモンドアイですが、引退レースでは単勝2.2倍にとどまりました。

レースでは2枠2番から好スタートを決めたアーモンドアイが道中4~5番手の好位を維持。レース前半の時点でアーモンドアイの勝利は決まったようなものでした。

直線に入ってからのアーモンドアイは、大逃げを打ったキセキを残り150mで捕えます。道中7~9番手追走の三冠馬2頭を寄せ付けず、完勝で有終の美を飾りました。

東京巧者の名馬 2 ウオッカ

タニノギムレット
タニノシスター
同世代の活躍馬ダイワスカーレット、ドリームジャーニー、スクリーンヒーローなど
競走成績26戦10勝(東京成績 6-3-2-1)
GⅠ勝鞍(赤字は東京GⅠ2006年 阪神ジュベナイルフィリーズ

2007年 日本ダービー

2008年 安田記念

2008年 天皇賞・秋

2009年 ヴィクトリアマイル

2009年 安田記念

2009年 ジャパンカップ

競馬界で最も有名な東京巧者といえば、戦後唯一のダービー牝馬となったウオッカに他ならないでしょう。

ウオッカは生涯成績で当時最多タイのGⅠ7勝を挙げ、うち6勝が東京コースという、抜群の東京巧者ぶりを発揮していました。

タニノギムレットとタニノシスターの間に生まれたウオッカの馬名には、「よりストレートで強く」といった願いを込められています。「タニノウオッカ」から冠名を省略してシンプルな馬名「ウオッカ」になったのは、そのためです。

「ウオッカは府中しか走らない」とコメントする競馬ファンもいますが、もともとウオッカは阪神コースを得意としていた競走馬です。おそらく、古馬になってから引退までの国内戦歴「11戦中10レースが東京コース」という極端さが、誤解を生んだのでしょう。

『ウマ娘』ウオッカの魅力

メディアミックスコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するウオッカは、ボーイッシュで硬派なウマ娘。熱い心を持つウオッカは日々「カッコいい」を追い求め、努力と挑戦を絶やしません。

ウオッカは「ちょいワル」でバイク好きな父を慕っており、少年のような純粋さを持っています。一方、少女らしい趣味は苦手な様子。特に映画鑑賞などで「ラブシーンを見ると寒気を感じる」といった弱点を抱えているようです。

東京巧者 ウオッカの注目レース「2007年 日本ダービー」

2歳女王となったウオッカは3歳になっても阪神と京都で順調に勝利数を重ねていきました。しかし桜花賞ではダイワスカーレットに黒星をつけられてしまいます。

ウオッカ陣営は桜花賞出走前から日本ダービーに挑戦する意志を公表していました。桜花賞に敗れても目標は変わらず、ウオッカは7戦目にして初の関東圏レースが日本ダービーという、大きな戦いに挑みます。

18頭立ての中、3番人気に推されたウオッカは道中10番手で追走。直線で馬群から抜け出したウオッカは牡馬を寄せつけず、逃げた2着アサクサキングスに3馬身差をつける圧勝劇を見せつけました。

ウオッカがダービーで記録した勝ちタイム2:24.5は、前週にローブデコルテが叩き出したオークスレコード2:25.3より速く、日本ダービーとしてもディープインパクト、キングカメハメハに次ぐ3番目の速さでした。

「3歳春の牝馬に2400mは長過ぎる」という常識は、馬場の高速化もあり少しずつ変わってきています。しかし、ウオッカが打ち立てた大偉業「牝馬による戦後初のダービー制覇」を超える活躍は今後、なかなか見られないことでしょう。

東京巧者の名馬 3 ジャングルポケット

トニービン
ダンスチャーマー
同世代の活躍馬アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、テイエムオーシャンなど
競走成績13戦5勝(東京成績 3-0-0-0)
GⅠ勝鞍(赤字は東京GⅠ2001年 日本ダービー

2001年 ジャパンカップ

1990年代から競馬界では「東京巧者といえばトニービン産駒」と言われてきました。そしてトニービン産駒の中でも特に東京巧者ぶりが目立ち、人気お笑いトリオのグループ名由来にもなった競走馬が、ジャングルポケットです。

ジャングルポケットは東京コース3戦3勝でGⅠタイトルを2つ獲得。

お笑いトリオ「ジャングルポケット」のメンバーは「競走馬ジャングルポケットのように、東京で負け無しの存在になる」といった目標を持ち、トリオ名に気持ちを込めています。

一方、ジャングルポケットには「東京競馬場改装工事に泣いた東京巧者」といった一面がありました。2002年のジャパンカップは東京2400mから中山芝2200mに変更。中山コースを得意としていないジャングルポケットは3番人気5着に敗れてしまったのです。

種牡馬としてのジャングルポケットは、サンデーサイレンス産駒やノーザンテースト産駒との配合が多く、ジャガーメイルやトールポピー、トーセンジョーダンなどのGⅠホースを輩出していきました。

東京巧者 ジャングルポケットの注目レース「2001年 ジャパンカップ」

2001年のジャパンカップではジャングルポケットのほかにテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ステイゴールド、ナリタトップロードの日本勢が上位人気を占めました。

1番人気こそGⅠを7勝した「世紀末覇王」テイエムオペラオーに奪われてしまいましたが、2番人気に推されたジャングルポケットは3歳馬に与えられた斤量2kg減のアドバンテージを活かします。

スタート直後に馬群の後ろから追走したジャングルポケットは先行勢が崩れる中、直線で早めに抜け出したテイエムオペラオーとの一騎打ちに突入。3着馬ナリタトップロードに4馬身差近くつけ、ジャングルポケットはゴール前でテイエムオペラオーを差し切りました。

東京巧者の名馬 4 スクリーンヒーロー

グラスワンダー
ランニングヒロイン
同世代の活躍馬ウオッカ、ダイワスカーレット、ドリームジャーニーなど
競走成績23戦5勝(東京芝コース成績 2-2-0-3)
GⅠ勝鞍(赤字は東京GⅠ2008年 ジャパンカップ

「牡馬が弱い」と疑われてきた、ウオッカ世代。「牡馬が弱い」と疑われてきたからこそ、東京巧者ウオッカに東京の舞台で一太刀浴びせた同世代牡馬、スクリーンヒーローへの注目度は高まりました。

スクリーンヒーローは東京芝コース7戦中、6戦で人気以上の着順で入線してきた東京巧者です。格上挑戦で東京GⅡを制し、同月に東京GⅠのジャパンカップを制覇。翌年の天皇賞(秋)でも7番2着と好走しました。

一方、スクリーンヒーローには父グラスワンダーゆずりの「非根幹距離適性」も兼備。種牡馬としても優秀なスクリーンヒーローは「非根幹距離巧者」のゴールドアクター、そしてGⅠレース6勝のモーリスなど、大舞台に強い産駒を多く輩出しています。

東京巧者 スクリーンヒーローの注目レース「2008年 ジャパンカップ」

スクリーンヒーローのデビュー戦は東京ダートレースでした。デビュー戦を13番人気4着で終えたスクリーンヒーローは10戦目まで、芝転向後も人気以上の着順を重ねてきました。

スクリーンヒーローは3歳秋、GⅡレースのセントライト記念を14番人気3着と好走。クラシック最後の舞台、菊花賞の出走権を獲得します。しかしレース後に骨折が見つかり、11ヶ月の長期休養を余儀なくされました。

4歳夏に復帰戦を勝利したスクリーンヒーローは好走を続け、2008年11月には東京GⅡレースのアルゼンチン共和国杯を、格上挑戦で制覇。中2週で同月のジャパンカップに挑みます。

2008年のジャパンカップ。ウオッカ、ディープスカイ、メイショウサムソンと、東京GⅠを2勝以上挙げてきた3頭が上位人気を独占しました。スクリーンヒーローは前走から4kgの斤量増と相手強化、外枠に入ったことで9番人気まで評価を落としていました。

レースでは道中3~4番手につけたウオッカとマツリダゴッホの後ろ外側をスクリーンヒーローが追走。内枠から好位をスムーズに走っていたはずのウオッカは、力尽きた逃げ馬ネヴァブションとコスモバルクに進路をふさがれてしまいました。

直線では早めに抜け出したマツリダゴッホをスクリーンヒーロー、ウオッカが捕えます。スローペースで先行力を活かしたスクリーンヒーローは、上がり最速の末脚で迫ったディープスカイの猛追をしのぎ切り、得意の東京コースでGⅠタイトルを手に入れました。

東京巧者の名馬 5 ストレイトガール

フジキセキ
ネヴァーピリオド
同世代の活躍馬ゴールドシップ、ジェンティルドンナ、ヴィルシーナなど
競走成績31戦11勝(東京成績 2-0-1-0)
GⅠ勝鞍(赤字は東京GⅠ2015年 ヴィクトリアマイル

2015年 スプリンターズステークス

2016年 ヴィクトリアマイル

東京巧者といえばジャパンカップや天皇賞(秋)など、中距離路線で活躍する競走馬の印象が強い傾向です。しかし、マイル界にも東京巧者は存在しました。7歳でヴィクトリアマイルを連覇した牝馬、ストレイトガールです。

ストレイトガールは通算31戦中3レースしか東京コースを走っていませんが、3戦ともGⅠレースで複勝率100%。驚異的な成績を残しています。

ストレイトガールがGⅠレース初制覇を果たした2015年のヴィクトリアマイルでは、3連単の配当が2,070万6,810円という大波乱が起きました。2021年現在、JRA重賞としては断トツの超高額配当です。

ストレイトガールは同年に出走したスプリンターズステークスも初の中山コースをものともせず、1番人気で勝利します。

同世代のジェンティルドンナとヴィルシーナが2014年で引退していくなか、2016年になってもGⅠタイトルを獲得してきたストレイトガール。「遅れてきたスーパー牝馬」として、ファンの心に刻み込まれています。

東京巧者 ストレイトガールの注目レース「2016年 ヴィクトリアマイル」

ストレイトガールがGⅠ初勝利を挙げたレースは、6歳で出走した2015年のヴィクトリアマイル。6歳牝馬によるJRAのGⅠタイトル獲得は、1989年ジャパンカップのホーリックス以来で、日本調教馬としては史上初の偉業です。

2015年当時、「ヴィクトリアマイルで6歳以上の高齢馬は消し」といった馬券格言がありました。2021年現在、「ヴィクトリアマイルで6歳馬は走らない」というセオリーを打ち破り勝利した競走馬は、ストレイトガールただ一頭のみです。

ストレイトガールは7歳馬になっても「GⅠ2勝の前年度覇者」として、2016年のヴィクトリアマイルに出走します。

前走の阪神牝馬ステークスで3番人気9着と敗れてしまったストレイトガールは「7歳牝馬の衰え」が心配され、7番人気での出走でした。1番人気は前年にオークスと秋華賞を制してきた4歳馬、ミッキークイーン。

18頭立てで行われたレースでは、ミッキークイーンと2番人気ショウナンパンドラが12~13番手の中団待機。ストレイトガールは10~11番手でした。

差しの決まりやすい、東京芝1600m。残り400mで加速したストレイトガールは馬群を突き抜けます。高齢牝馬と思えぬ強さで、2着ミッキークイーンに2馬身半差の圧勝。ヴィクトリアマイル連覇で有終の美を飾りました。

ストレイトガールは2016年のヴィクトリアマイル制覇によって「7歳牝馬によるJRA初のGⅠタイトル獲得」という、大偉業をも成し遂げたのです。

競馬界の主役となる「東京巧者」の特徴とは?

「東京巧者」と呼ばれる名馬は、実にたくさんいます。別の記事でご紹介した、スペシャルウィークやキングカメハメハも東京巧者でしたね。

クロフネのように、東京芝GⅠと東京ダートGⅠの両方を勝ち抜いた競走馬もいます。

競馬界に数多く、名を残した「東京巧者」。中でも、今回の記事では「特に」東京コースでの成績が素晴らしく輝いた名馬を5頭に厳選し、ご紹介させていただきました。

【左回り】東京コースと中京コース、新潟コースとの違い

JRAの競馬場は、右回りコースがほとんどです。左回りコースは東京、中京、新潟の3場しかありません。「東京巧者=左回り巧者」とも限りませんので、予想のときには注意してください。

東京コースはコーナーが広く、長い直線に緩めの上り坂が組み合わされているコースです。そのため、同じ距離でも他の競馬場よりスピードとスタミナが必要とされ、ロングスパートの得意な競走馬に向いているコース、と言えるでしょう。

東京コースには同じ左回りでも、新潟のような急コーナーや中京のような急坂はありません。一般的には、跳びの大きいウオッカやクロフネなど、「ストライド走法が特徴の競走馬に向いたコース」と言われています。

今後も、新たなる「東京巧者」の誕生に期待しましょう!!

今回に記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!

2021年現在でも、現役の「東京巧者」はJRAの中で大きな存在感を放っています。競馬界の歴史に刻まれる名馬の誕生を、これからも期待し続けましょう!!

今回の記事が少しでも参考になりましたら、とてもうれしく思います。それではまた、別の記事でお会いしましょう!!