「尾花栃栗毛」という毛色をご存じでしょうか?
金髪の栗毛である「尾花栗毛」と、出現確率1%未満の珍しい毛色「栃栗毛」。2つの珍しい毛色が組み合わさった「尾花栃栗毛」は近年なかなか、お目にかかれません。
今回の記事では、驚異的な速さで競馬界を圧倒した「尾花栃栗毛の名馬」サッカーボーイの魅力に迫ります。
「尾花栃栗毛」は白毛よりも珍しい?

2020年にデビューした「最強の白毛馬」ソダシは2021年4月現在でも無傷の連勝街道を歩み、ものすごい勢いで数々の記録を塗り替えています。
出現確率「約1700頭に1頭」と言われている白毛馬に対し、「尾花栃栗毛」の出現確率は、どのくらい珍しいのでしょうか?
地味な毛色だけど、実は超珍しい!「栃栗毛」
「栃栗毛」とは簡単に表現すると、栗毛より少し暗い毛色です。
栃栗毛は鹿毛や黒鹿毛にも見えやすく、脚と胴体との色を見比べることで区別しています。
前述しましたが栃栗毛はとても珍しい毛色。出現確率はの割合なんと、1%未満から約0.2%までの減少傾向にあるのです。
栗毛の出現確率が「4頭に1頭」だとすれば、栃栗毛は「100~500頭に1頭」。
見た目が珍しく映らなくても、栃栗毛は白毛に負けないくらいの珍しい毛色なのです。
珍しい「尾花栗毛」は栗毛の一種
栗毛の中でも、たてがみや尾の白い毛色を「尾花栗毛」と呼びます。
「尾花」とはススキの穂のことで、白い尾がススキのように見えることから名づけられました。
尾花栗毛も珍しい毛色で、一般的には「16頭に1頭」と言われています。栗毛の出現確率「4分の1」から、さらに「4分の1」の確率……、といったところでしょうか。
近年では「最強種牡馬ディープインパクトからは栗毛の仔が生まれない」こともあり、栗毛馬は減少傾向。同時に尾花栗毛の競走馬も、さらに珍しい毛色に見られているのです。
「尾花栃栗毛」の名馬、サッカーボーイ!!

珍しい毛色である「栃栗毛」と「尾花栗毛」。両方の特徴を持った「尾花栃栗毛」なる毛色の競走馬は存在するのか?
「白毛」よりも珍しいかもしれない「尾花栃栗毛」を調べてみると、インターネット上で1頭だけ、見つかりました。
何十年もの競馬ファンならご存じですね?そうです!「弾丸シュート」と呼ばれた名馬、サッカーボーイしかいません!!
サッカーボーイの「尾花栃栗毛」が注目されない理由

非常に珍しい「尾花栃栗毛」の名馬サッカーボーイですが、意外にもサッカーボーイの毛色の珍しさは大注目されていません。
7%の確率で出現する芦毛には時代ごとに「芦毛の怪物」が出現するのに、どうしてサッカーボーイの毛色については大注目されないのか?……深掘りしてみましょう!!
「尾花栗毛」「栃栗毛」は珍しいと思われていない?

サッカーボーイの画像や動画をご覧になったらお分かりでしょうが、芦毛や栗毛と比較し、栃栗毛は地味な毛色です。
栃栗毛を「栗毛と黒鹿毛の中間の毛色」くらいにしか思わない競馬ファンも、多いのではないでしょうか。
しかし「サッカーボーイだからこそ、珍しい毛色が注目されなかったのでは?」と考えるほうが、自然でしょう。理由をご説明します。
【三白眼】サッカーボーイは目つきが悪く、気性難だった

一般的に「尾花栗毛」の競走馬は黄金に見える風貌から、「貴公子」のように見られがちです。
サッカーボーイの1つ上にあたるゴールドシチーや、「イケメンホース」で知られたトウショウファルコは、競走成績と毛並みの美しさ、両方で知名度を得ていました。
しかしサッカーボーイは父ディクタスの短所というべき気性難を受け継いでおり、目つきが悪いことで有名です。
「ディクタスアイ」と呼ばれた「三白眼」
サッカーボーイの「目つきの悪さ」は人間とは違い、白目をギョロギョロとむき出しにする「三白眼」。機嫌が悪くなると白目をむき出す癖はサッカーボーイ以外のディクタス産駒にも多く見られ、「ディクタスアイ」と呼ばれていました。
サッカーボーイの気性難は仔馬のころから種牡馬になってからも治まることはありません。余生を送っていた晩年でも見物に来たファンを威嚇することがあり、サッカーボーイは生涯「やんちゃ坊主」であり続けました。
サッカーボーイは競走成績と種牡馬成績が超優秀!!
サッカーボーイの「尾花栃栗毛」が注目されなかった一番の理由は、やはり「競走成績と種牡馬成績のすさまじさ」でしょう。
サッカーボーイは「裂蹄しやすい」といった弱点を常に抱えていました。
裂蹄の原因は蹄の弱さもあったのでしょうが、やはり「サッカーボーイが速すぎた」からだと考えられます。
さらにサッカーボーイは種牡馬としての成績も優秀です。サンデーサイレンス産駒ばかりが大レースを独占状態にしていた時代、サッカーボーイは内国産種牡馬の成績アップに大きく貢献しました。
【尾花栃栗毛の名馬】サッカーボーイのプロフィール
父 | ディクタス |
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母 | ダイナサッシュ |
馬主 | (有)社台レースホース |
調教師 | 小野幸治(栗東) |
競走成績 | 11戦6勝 |
主なGⅠ勝鞍 | 1987年 阪神3歳ステークス 1988年 マイルチャンピオンシップ |
「尾花栃栗毛」といった珍しい毛色を持ちながら、競走成績や種牡馬成績ばかりが注目される、サッカーボーイ。
「弾丸シュート」の異名を持つサッカーボーイが生み出した、すさまじい成績の数々を振り返ってみましょう。
【弾丸シュート】サッカーボーイの名レース
サッカーボーイは阪神3歳ステークス、マイルチャンピオンシップと、2つのGⅠレースを勝利しています。
しかし、最もサッカーボーイを伝説的な存在に押し上げたレースといえば、GⅢの函館記念でしょう。
1988年 函館記念
高速馬場だった時代の函館記念。サッカーボーイはメリーナイス、シリウスシンボリのダービー馬2頭と牝馬2冠のマックスビューティを相手に圧勝。
当時の芝2000メートルの日本レコードを大きく更新しました。
現在、函館競馬場では寒さに強いがスピードの出にくい洋芝を馬場に使用しているため、野芝を使用していた時代にサッカーボーイが叩きだした「函館芝2000メートル」のレコードは、「永久に不滅」と語り継がれています。
短距離で活躍したサッカーボーイ、実は長距離血統!!
サッカーボーイは「長距離血統なのに短距離界の主役になった」という伝説も、日本競馬界に残しています。
サッカーボーイは前述したとおり、気性が荒く裂蹄しやすいといった弱点を抱えていました。長距離界で気性の荒さは大きな弱点です。
しかし時として、気性の荒さはとんでもない破壊力を生み出します。短距離はサッカーボーイの適性距離となりました。
破壊力と長距離血統が持つスタミナを武器に、サッカーボーイはラストランの有馬記念も3着と好走しました。
サッカーボーイ産駒の代表といえば……

長距離血統と短距離実績の両方を兼ね備えたサッカーボーイは種牡馬として大活躍します。
初年度産駒では、長年にわたって地方競馬での重賞を勝ち抜いてきたキョウトシチー。
GⅡ最多勝を記録した菊花賞馬ナリタトップロード。秋華賞馬ティコティコタックなど。
中でも最も有名なサッカーボーイ産駒といえば、GⅠを人気薄で3勝したヒシミラクルでしょう。
ヒシミラクルの活躍でサッカーボーイは最優秀内国産種牡馬を受賞します。
サッカーボーイがウマ娘化されない理由
2021年も大人気のメディアミックスコンテンツ、『ウマ娘 プリティーダービー』(略称『ウマ娘』)。
歴代の競走馬を美少女に擬人化させた世界を描く『ウマ娘』には、競走馬のエピソードを反映させた個性豊かなメンバーが多く登場します。しかし残念ながら、サッカーボーイには「ウマ娘化NG」判断が下されました。
サッカーボーイの馬主は社台レースホース。「馬主にとって競走馬は金融商品でもあり、アニメやゲームによってイメージが変わると損益に影響する」といった理由から、サッカーボーイにはウマ娘化の許可が下りていないのです。
サッカーボーイは「ディクタストライカ」としてウマ娘化?
#ウマ娘#シンデレラグレイ
サッカーボーイ!?サッカーボーイじゃないか!!なんだよディクタストライカって、かっこいいじゃねぇか! pic.twitter.com/3O9OEHVRZl— A.H♥T.K☂︎ (@AH77915382) May 19, 2021
ウマ娘化NGのサッカーボーイですが、『ウマ娘』ではサッカーボーイをモデルにした「栗毛の弾丸 ディクタストライカ」というキャラクターが登場します。
ディクタストライカ……、サッカーボーイのイメージに合わせた、「カッコイイ系」のウマ娘……といったところでしょうか。ストーリーを盛り上げる、重要なキャラクターになりそうですね!!
【最後に】「尾花栃栗毛」の名馬はもう出ない?
「尾花栃栗毛」という大変珍しい毛色を持ちながら、驚くべき速さと成績のほうで競馬史に名を残したサッカーボーイ。
今後、「尾花栃栗毛の名馬」が現れることは「白毛の名馬」を生み出す以上に難しい、と予測しています。
サッカーボーイの持つ珍しい毛色「尾花栃栗毛」がもっと注目されることを、願っていきましょう!!
今回の記事も最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!!